菊池寛作家育成会

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菊池寛作家育成会出身作家

菊池寛作家育成会出身作家続々デビュー!

菊池寛作家育成会の親身の指導でプロ作家が誕生!このあとに続くのはみなさんです!

デビュー作家(1) 藤村与一郎

1957年、東京都生まれ。米国ニューヨーク大学大学院卒業。会社勤めのかたわら執筆活動を続けていたが、米国滞在中に江戸文化へのあこがれを強く再認識して時代小説家となることを決意。菊池寛作家育成会で修行の後、本作品により同会出身者として初の作家デビューを果たす。

  • 「鳳凰の珠/満願丹」
    ■デビュー作品
    「鳳凰の珠/満願丹」
    伊吹隆志+藤村与一郎著
    A6判352ページ・638円+税
    ベストセラーズ刊
    ISBN:978-4584366547
  • 「鳳凰の珠/満願丹」
    ■第二作目
    「囁く駒鳥 影与力小野炎閻魔帳」
    藤村与一郎著
    A6判352ページ・638円+税
    ベストセラーズ刊
    ISBN:978-4584366585

2009年2月20日。菊池寛作家育成会が発足して1年。
ついに、菊池寛作家育成会より作家デビューを果たした方が登場! 藤村与一郎さんがその人です。
デビューにあたり、藤村与一郎さんに特別寄稿をいただくことになりました。
今回と次回の2回にわたって掲載させていただきます。

  • 第1回「菊池さんとのこと」
  • 第2回「松森さんとのこと」

藤村さんコラム第1回「菊池さんとのこと」

藤村与一郎さんのデビュー作『満願丹』の冒頭がこちら。

藤村与一郎さんのデビュー作『満願丹』の冒頭がこちら。内与力(ないよりき)小野炎が活躍する時代小説である本作。江戸文化への造詣の深さが作品の奥行きを生む。育成会講師・菊池夏樹が注目したのもうなずけよう。
※画像をクリックで拡大します。

菊池さんからお電話を頂いて直接声をかけていただいた時には、無論驚きもし嬉しくもあったのですが、ようやくと高い山並みの向こう側の道が垣間見えた気が致しました。

初めてお会いした時の印象は、実は事前に思い描いていた通りの方でした。良き時代に文芸の世界の第一線に立たれて身につけられたのであろう風韻が、とにかく際立っておれました。

でもいざお話が始まってみると、その眼差しは、おそらくここ十年か二十年で随分と様変わりしてしまった、今現在の文芸の世界と読者に向けられておられました。その後一年近くの間、私の習作の、作品とも呼べぬ読み物を題材に、ご謦咳に接し続ける光栄を得て参ったわけです。

菊池さんに最初に促されたことは、職業作家、いやより現実的にはサラリーマンとの兼業作家として、プロとして読者に向き合っていくことへの覚悟でした。その覚悟さえすわれば、(この下りは汗顔の極まりなのですが)才能の方は私が折り紙をつけるから、プロとしての創作が出来るはずだと励まして頂きました。

そして、実際これから作品の構想を企図していく上で留意するように教えられたのは、今や相当の人気作家でも、自身の好みや考えを押し殺して、現代の読者にとって面白い題材を扱い、興味を引きやすい描き方をしている。新人はとくに、この辺りを肝に銘じて、読者に読まれやすく、ファンになって貰い易い題材と構成を心べきと、懇切な教示を受けました。

そしてまたこの辺りも肝要と思われる点なのですが、それは読者や時代に媚びているに似て、そうではない。作者たるものまず読者の心に自身の名を強く印象づけ、平たく言えば著名な作家となって、その上で作者が至高と思う題材や表現を、思う存分展開すればよいのだとも教えられました。

今の私の場合はようやくと、プロとしての文芸に携わっていく道が朧気に浮かびはじめているにに過ぎない訳ですが、この作家としての理想の形は、見果てぬ夢として抱いて行こうと、菊池さんのお話を伺いながら思いました。

それから菊池さんご自身もブログに書かれていることなのですが、この会に応募する作家志願者側の随一のメリットは、才能と可能性を見極めてもらえることだと思います。

昔ほどではないのかもしれませんが、作家志望者は多い。投稿の常連さんではなくとも、地道に書き綴り続けている人は膨大な数いらっしゃるはずです。そして私もそうであるように、色々なことを後回し或いは犠牲にしながら、書き続けている。私は本当に強運で、菊池さんと編集者である松森さんのお陰で、夢を叶えることが出来ましたが、残念ながら現実としては、そうした多くの方々の積年の努力は大半が私家蔵されて終るわけです。

こういう申し上げ方は、身も蓋もないかもしれませんが、この会への投稿をご自身の試金石とされることは、人生の現実問題としてとても意味がある。創作に対する自信を深めたり、思いを強くしたり、或いは思いを断ち切ったり、とにかく長く続けてこられたはずの、ご自分一人の孤独な戦いに、何らかのメリハリをつけられるということは、大きなメリットなのだと思うわけです。

藤村さんコラム第1回「松森さんとのこと」

藤村与一郎さんのデビュー作『満願丹』の冒頭がこちら。

藤村与一郎さんの第2作目『囁く駒鳥 影与力小野炎閻魔帳』の冒頭がこちら。内与力(ないよりき)小野炎が活躍する時代小説の続編となる本作。炎の影働きぶりが今回も鮮やかな作品。
※画像をクリックで拡大します。

編集者である松森さんの寛仁大度な度量の賜物で、このたびデビューを果たすことが出来ました。有り難いことと思っています。ここで“眼力“の賜物とも付け加えたい所ですが、それは今後の私の精進次第ということで、残念ながら今は中々申しあげられません。

編集者は作家の調教師のような存在とよく言われますが、作家と言っても就中私のようにこれからデビューしようというような駆け出しにとっては、それ以上の存在であり、作家を育てるという役割を担われています。

松森さんには作品の精度を上げていくという、出版向けての根幹のプロセスを協働していく上で、短期間に実に多くのことを教えて頂きました。

その詳細を述べるにはとても紙数が足りませんが、大要でいえば以下の二点でしょうか。

一つは徹底的に読者の立場に立って書くと言うことです。創作は作者の書きたいことを書くというものでは既に無く、読者が描いて欲しそうなことを作者が代わって書く。現役最前線の編集者として、松森さんは実に微に入り細に入ったところまで、時代劇分野での、今現在の読者層の好みや読書習慣に知悉しておられるし、分析もされておられます。その上で、

*プロットは重要であるが、主人公や主要な脇役がキャラ立っていることが、より肝要。
*作品とその主人公の背景が重要。

読み出し部分で、読者が我が身に照らして思い入れが生じて、先が気になって買わざるをえなくなるような、読者の読書心をすく掬うことが出きるような“先が気になる”導入部を描く。その為にも、背景設定は重要。

*特にシーンの終り付近で、余韻を持たせた終り方をするよりも、はっきりと情景を描いてあげることが重要。
*地の文で、無論作者は語り手としての役割を担うが、シーンごとに登場人物の中から視点主を決め、その人の視点で書いた方が、臨場感や迫力が倍加する。

等々の、創作のテクニックを縷々教示して頂きました。無論今の私には、未だ縦横に駆使しえぬ技量ですが、もし研鑽の末に我が手の内とすることが出来たならば、あるいは今後も作品発表の機会にめぐまれるかもしれないと、ひそかに期すところではあります。

二つ目は、物を書いたり、それを手直しを加えてて編集したりする人にとって、幸福とはいえぬ時代に居合わせているわけですが、それでも文芸、より端的には小説という表現形態は、社会や個人の人生に対して力を持つ。商業出版ですから読者の意向は十二分におもんばか慮る。慮った上で、小説は読者の人生を慰めたり、あるいは良い方向に導いていくという役割は少しも損なわれていないことを、教えられました。

松森さんは敏腕という仇名を進呈されている編集者ですが、この活字離れの時代に、この二つ目を心構えとして保ち続けていられるのは、一重に彼の敏腕によるものです。よく似た言葉に辣腕というのもありますが、私ならこんな言葉は辞書には無いでしょうが、しゅん俊わん腕と名づけます。敏腕も辣腕も、また俊腕も似たような意味でしょうが、俊という文字には人偏が付いていますから。

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